売上げの差は 笑顔の差
僕が「笑顔が売上の決め手だ!」と気づいたのは、大手アパレルチェーン鈴屋に勤務していた時のことです。
玉川店(玉川高島屋ショッピングセンター内)の店長を務めていた1980年頃だったでしょうか。あるとき、一人の女性販売スタッフが目に留まりました。そのスタッフがアルバイトで販売経験もまだ半年未満と浅く、商品知識もさほどないにもかかわらず、初めてのお客さまにも好かれるんですね。常連さんもたくさんいる。玉川高島屋といえば、グレードの高いお客さま多いので有名ですが、そうしたお客さまともとても親しそうにお話ができるんです。当然、売り上げもいい。
何でだろうか?
どこが他の販売スタッフと違うのだろう?
そう思って彼女の動きを見ていると、とびきりいい笑顔でお客さまと接しているんですね。「笑顔のいい子だなあ。きっとあの笑顔が人を魅きつけるんだろうな」・・・その時は、軽く感じた程度でした。
そんな漠然とした「予感」確信に変わったのは、その後 本部の販売ディレクターになり全国の店舗を回って店長や教育担当者、セールストレーナーの指導などにあたっていたときでした。
全店舗、同じ商品を、同じ接客マニュアルのもとで販売していたのに、店舗によって売上の差がでてくるんです。20〜30%、極端な場合は同じ商品でも二倍、三倍もの売上の差です。もちろんお店によって、気温や立地条件の差はありますが、二倍、三倍ともなるともっと根本的な問題です。これまた「?」でした。
そしてちょうど同じ時期に、もう一つ「?」がありました。
担当店舗を巡回しているうちに、行きやすいお店、指導するにも熱が入ってしまいお店、ついつい長くいてしまうお店がでてきます。一方で、そうでないお店があることに気づいたのです。聞いてみると、同じ仕事をしている他の本部スタッフも同じように感じていたことがわかりました。
どこのお店だって同じように頑張っています。本部としては、どこのお店も同じように指導するわけで、えこひいきしているつもりはまったくありません。それなのに、何で違いがでてくるのだろう。不思議でした。
さらに巡回を重ねるうちにわかったのは、自分や本部スタッフにとって「店長やお店が元気で笑顔のあるところの方が断然行きやすい!」ということでした。そして、それはお客さまにとっても同じなんじゃないかと、僕は考えるようになりました。
そうして改めて各店舗を見てみると、やはり売上のいい店舗、伸びている店舗には必ず、笑顔のいい販売スタッフがそろっていました。
商品知識が抜群とか、ベテランとか、ハンサムだと美人とか、そういう問題じゃないんですよ。お客さまに好かれ、売上のいいお店は、必ずみんな笑顔が素晴らしい!もちろん営業スマイルを超えた自然な笑顔です。初めてのお客さまにたいしてもすーっと気持ちを寄り添うような、なんとも安心感と親しみのある笑顔・・・「これだ!」と実感しました。
しばらくして、そんな僕の考えを証明する決定的なことが起こりました。
会社が各店の仕入れによるバラエティあふれる商品構成から、商品を絞り込んだオリジナル自社商品の販売体制で利益率を上げる販売へと、大きな業態改革を行ったのです。
結果、そのチャレンジは残念ながら失敗に終わりましたが、例外的に成功したお店がありました。日頃から元気で笑顔のあったお店です。僕が担当していた約100店舗のうちで言えば、元気で笑顔のある店しか成功できなかったです。
元気で笑顔が溢れていたお店は、当然ながら大勢のリピーターがいらっしゃいました。そういうお店が成功したのは、販売スタッフに信頼感や共感を持つお得意さまが新しい商品構成をすんなりと受け入れてくれたからです。
「やっぱり、売上の差は笑顔の差だったのです!」
僕は心の底から確信しました。