笑顔の法則 ③
顔はけっこう嘘をつく
楽しい時や気分のいい時は、誰でも自然に笑顔になるものです。
これは、その人の感情が素直に表情となって表れているケースです。そうした自然な笑顔に触れて気分を悪くする人はいません。
日本人は、自然を愛し、必要以上に相手を思いやる心や人間関係、特に感情の機微を大切にしてきました。
仏教の教え「和顔施」どんな時でもニコニコしていることは大切な人間形成。その教えは広く躾けられ「おもてなし」という文化も生まれました。
そして今、コロナ禍になりストレスいっぱいの社会になりました。
子供から年配者まで、顔を隠すのが当たり前になってしまいました。1日のうちで楽しい時間はどれほどあるのでしょうか?
嫌な出来事があっても、周囲のことを考えて、外見的に感情を表に出さないようにしていることの方が多いのではないでしょうか。
状況によっては、おかしくもないのに笑ったり、うれしくもないのにうれしそうな顔をしたりしなければならないのがしょっちゅうです。
マスクは顔パンツです。マスク一枚で心まで簡単に隠れます。
マスクをつければストレスから開放されます。顔を隠せるマスクはとても便利なツールです。日本人にとって顔を隠すというマスク着用の行為は、ウイルスから身体を守るという本来の役割を超え、ストレスから身を守る最適な便利グッズとして定着しました。密でなければマスクを外した方がいいと感染症の専門家や政府から指導されても、いまだに多くの人は外出時にマスクを着用して顔を隠しています。日本人からマスクはなくならないでしょう。
アメリカで長年にわたりコミュニケーション学を研究し、日本でも著名な学者 アルバート・メラビアンは、目の前にいる人に対して「その人がどのような人物か」をイメージする時、その人から発せられる言葉から判断されるののはわずか7%、38%が声の質、55%は顔の表情によると述べています。つまり、私たちは人と会話していても半分以上は相手の顔の表情によってその人の人物像を判断しています。
私の長年の研究では、顔の中で一番感情を伝えるのは、目ではなく口元の動きなんです。
アイコンタクトという習慣のない日本人には気づかない盲点かもしれません。あまり口元を隠すことに抵抗がないのです。
逆に言えば、そうした事実を感覚的にわかっているからこそ、心の内とは違う表情を顔に表そうとするのかもしれません。
顔は自分の感情に大してけっこう嘘をついているのです。嘘と言う言葉のイメージは良くありませんが、心の内とは違う表情を作りこと自体は、社会生活上、また人間関係の上で必要不可欠です。多くの人がそうであるように、私自身も時々、心で泣いても顔は笑って生きてきました。マスク着用と言う行為は、気配りの国、周りの人を気にしすぎる民族にとって、同調圧力やマスクに引きこもるという悪しき習慣を植え付けてしまいました。
無意識でも良い笑顔をつくろうと演技できることは、それはそれで立派な能力であり、長所なのです。
また、それができるか否かが、すぐに感情的になってキレてしまう最近の子供や若者たちと、社会経験豊富な大人の違いでもあります。ところが。本人が気づかないうちに、その長所で失敗してしまう場合もあります。「あの人は、外面がいいんだから」「腹の中は何を考えているのやら」と。
性格的には感情をあらわにするのは、一般的には短所の一つであります。
しかし、長所と短所は紙一重。場合によっては、その時々の感情を相手に素直にづつけたほうがいい結果が得られることがあります。
だから人付き合いは難しい。人間関係の中では、長所が短所になり、短所が長所になったりを繰り返し人間は成長してきました。
マスクに引きこもる新たな習慣は、人間関係の葛藤を少なくしました。
それは、間違いなく自然な感情が見えなくなり、伝わらないという大きな問題点があります。
日本の近い将来、アバター以上に感情表現の苦手な人間「顔なし族」が大量に誕生する予感がします。
マスクのはずせない子供たちがたくさんいます。その事実を、どう思いますか?