「車内販売」の意味を問う
東海道新幹線の「車内販売」がなくなるというニュースが飛びこんできました。
僕にとっては、たかが「車内販売」ではありません。JR東海の新幹線事業部を中心に、駅長、助役、新入社員から関連会社まで、10年以上にわたり1万人以上の笑顔研修をおこなってきました。JR東日本では、鉄道の新規事業として、ショッピングセンターのルミネを中心に、約20年笑顔ビジネスの基礎を築きました。ルミネから功労賞をいただきました。
アフターコロナ時代に突入し、新しい時代に突入しました。人間の仕事がAIに奪われ、セルフが当たり前になり、人間のあり方も変わる時代です。しかし、鉄道事業にとって一番大切なのは「安心安全」です。これは不変です。国鉄時代から人間力を大切にしてきました。象徴的なのは「3、3歩行」の指導がありました。一車両を30歩、30秒でゆっくり、お客さまを確認しながら歩くと言うことです。お客さまの背中から歩く場合は、さらにゆっくりと歩きます。
JR東海や車内販売の関連会社の笑顔研修では「3、3歩行」を進化させて、「アイコンタクト+笑顔運動」を全社を揚げて取り組みました。その活動は在来線まで広がり、千種や三島の研修センターで新入社員教育に組み込まれました。その効果は、お客さまの声やサービスマナー調査で数字で検証され評価されました。顧客満足度が一挙に高まりました。新幹線事業部を中心に各駅に広がり、全社で盛り上がりました。その活動は、ビデオ化され東京駅の構内でも流され、さらに鉄道事業のサービス意識は高まりました。
「車内販売」の一部を紹介しましょう。
車両の入り口で、全ての作業を中止して一礼(語先後礼)をする。〜ながら禁止。笑顔で車内全体を見ながらご案内「サンドイッチにコーヒーをお持ちいたしました・・」ゆっくりと乗客の様子を優しく見ながら歩きます。目があったお客さまのエリアでは、さらにゆっくりと歩きます。アイコンタクトと笑顔を意識します。結果、その販売効果は、売上アップ、セット率の向上につながりました。
車掌の声かけ率もあがり、危険物の持ち込み防止の牽制になりました。車内販売の笑顔応対は朝日新聞でも紹介されました。残念なニュースもありましたが、事件事故の発生率が高いのは、車内巡回が及ばない自由席が多かったです。笑顔があれば事件事故も防げたのではないかと悔しい思いをしました。事件があると管理体制が強化され、組織が一変します。笑顔のバトンがつながらないのが残念です。
あるコンビニの店長の話です。
この店は、全国でも万引き率が高いワースト店、利益のロスに悩まされていました。笑顔研修を受けた店長は、補充しながら売り場をラウンドするスタッフに「アイコンタクト+笑顔運動」を徹底しました。効果はすぐに出ました。万引きが激減したのです。
捕まえた万引き犯に聞きました。「どうしてこの店が、万引きに入りやすいのか」と尋ねました。「お客に気づかず作業に専念しているから・・」「放ったらかしで万引きしたくなる雰囲気がある」だから、万引きがしやすいそうです。反対に、万引きをしようとして入店しても、万引きしにくい店もあります。アイコンタクト+笑顔で応対されて、万引きできずにおにぎりを買って帰ったことがあると・・・。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD173D20X11C23A0000000/
(写真引用 日本経済新聞より)