笑顔の楽校54
ケース35 和菓子ショップ
クオリティだけで勝負していませんか?
和菓子ならではの“和(なごみ)”の世界観を提供するためには、味以上に“おいしさの仕掛け”も大切です。
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おはぎ、団子、わらび餅、どら焼き…手作りのこだわりの和菓子が並んでいます。甘党の僕はついついおはぎをオーダーしてしまいました。スタッフが目の前で、お餅を1つひとつたっぷりのきなこにまぶしてくれます。よい香りが鼻をくすぐり、お客様が思わず笑顔になってしまう仕掛け。聞けば、昔ながらの製法で保存料、人工甘味料、香料は一切使用していないとか。レジ奥、横長の厨房で手作りした和菓子をすぐ売場に、という“つくりたて感”も大きな魅力です。さらにショップの一角では、ウインドウ越しにあんこのおはぎの手作りシーンを見ることも。午前中の閑散時間帯、40~50代の気さくなお母さんといった感じのスタッフ2名が切り盛りしていてなんだかのどかなムード。味も文句無し。まさに和(なごみ)菓子です。
作業とクオリティだけに熱中していませんか?
コンセプトもクオリティも素晴らしいお店です。でも、ちょっと残念に思った点もあります。
【環境ベーシック面】
●通路面の看板サインが消えていました。他店がピカピカに明るい分、異様に暗く感じました。
●商品ディスプレイ台が低いため、通路からレジ奥の厨房が丸見え。棚にかけている、キレイとは言い難い色のカーテン、しかもめくれているので乱雑な棚の中も丸見え。冷蔵庫の上も雑然としています。
●レジカウンターのそばに、おつりのトレイ、わりばしのケース等さまざまなものが無造作に。プラスチック製で青や黄の原色は、和とはかけ離れたイメージです。レジと商品ディスプレイ台が至近距離のため、当然お客様の目に入ります。
【接客面】
●商品を渡す際にはアイコンタクトがありましたが、きなこをまぶしてくれているとき、販売スタッフの目線は商品にだけ向けられていたのが残念。
●販売スタッフは白衣、マスク、帽子と製造工場のコスチューム。つくりたて感は伝わりますが、接客時のマスクは表情がわかりにくいので不向きです。
これらの原因は、クオリティ(味)だけを追求するあまり、そのほかのことに「気づけない」からです。今は、「おいしい」「安い」だけでは長続きしない時代。「おいしさの仕掛け」が必要です。このショップの場合は、次の2点です。
◎基本は、整理整頓。お客様の目に映るもののなかで、おいしさを阻害するものは徹底的に排除する。
例:お客様に関係のないものは見せない。どうしても目に触れるものはきれいに見せること。
◎おいしいものがよりおいしく見える演出を工夫する。
例:きなこをまぶすパフォーマンスをもっとライブ感のある接客につなげる。販売スタッフの笑顔をわかりやすく伝えるには、マスクをはずして接客。和の雰囲気を出すために、接客スタッフのコスチュームを工夫する。
ここの商品は、本当においしいんです。持ち前のクオリティに加え、こうした「おいしさの仕掛け」の必要性に気づいたら、きっと鬼に金棒ですよ。
【コミュニケーションUPのポイント】
1 オープンキッチンの魅力を生かす
厨房は「見せる」意識で、徹底的にきれいにすること。和の調理器具などもディスプレイすれば、お客様との会話のきっかけに。
2 きなこパフォーマンスを極める
おいしいシーンのときこそ、笑顔+アイコンタクトで盛り上げましょう。
3 POPもきれいに見せる
POPは重要な販促ツール。貼る高さを揃えてきれいに、見やすく。