笑いのルーツ(挨拶と笑い)③
禅の言葉で「挨」と「拶」は押し合うという意味です。禅僧が修行で押し問答しながら、相手の悟りの深さを知ろうとする心の働きかけ、それが本来の意味です。士農工商の縦割り文化の躾には、都合のいい仏教の挨拶が積極的に取り入れられました。時が経つと気持のいい挨拶は、形から心へ、美しいしぐさや言葉が求められ、形がともなうことで日本的な挨拶は完成されます。茶道、華道などいろんなお作法も進化しました。「形はこころを求め こころは形をすすめる」。時間を経ても今なお日本式挨拶は、形からと接客接遇教育で躾けられています。日本の良き伝統として若者達に伝えていきたいです。
「和顔愛語」とは、穏やかで親しみやすい振る舞いと言葉遣い。優しい表情になれば、言葉も親愛の気持がこもった言葉になる。「語先後礼」とは、言葉とお辞儀を同時におこなうよりも、言葉を述べた後に丁寧に頭を下げた方が優しい気持が伝わり、しぐさ全体も美しく見えます。
理由は、笑顔をつくるのに大切な心のリラックスができにくく、人は指先をそろえるだけで緊張します。こころも身体も動いている方が自然な笑顔になりやすいし、緊張しない方が笑顔になりやすい。挨拶訓練は、形にはめ込もうとしますが、お辞儀はできても笑顔は出来ない、かなり無理があります。テンションを上げると声だけ大きくなり、形だけが先行します。相手の笑顔につながる気配りにかけます。お作法で最も嫌う「〜ながら族」になりやすいので要注意。
日本人の笑顔は「笑みを含んだ顔」と訳されます。
お歯黒という風習もあり、積極的に表情を作ることや歯を出すことを推奨しなかった。しかし、考えてみてください「歯を出さないで自然に笑えますか?」自然な感情を優先すれば、自然と歯が見えてしまう。そうすると手で口元を隠す。コロナ禍が去ったいまでも、外国人は日本人のマスクで顔を隠す人が多いのには、驚きを隠せません。まだ、お歯黒文化は形をマスクに変えて健在です。